甲州印伝の歴史を年代別にかんたんに紹介
奈良時代: 日本の革工芸の歴史が始まる。
戦国時代: 鹿革が武具として武士たちに愛される。
1624-1643年: 寛永年間に印度装飾革が幕府に献上され、「印伝」と名付けられる。
1710年: 甲州印伝の始まり、漆置きによる紋様付けが始まる。
1802-1809年: 「東海道中膝栗毛」に印伝が登場。
1854年: 「甲府買物独案内」に印伝細工所が記録される。
19世紀末期: 甲州印伝が山梨県の特産品として確立。
1975年: 甲府印傳商工業協同組合が設立される。
1987年: 国の伝統的工芸品に甲州印伝が認定される。
甲州印伝の歴史(詳細)
甲州印伝は、日本の革工芸の伝統の一つで、その歴史は奈良時代にまで遡ります。奈良の正倉院には、現在もニホンジカの皮革を使用した製品が保管されており、日本の革工芸の繁栄が確認できます。戦国時代には、鹿革が甲冑などの武具に使われ、さまざまな文様や技法が開発されました。
甲州印伝の起源は、江戸時代後期にさかのぼります。1710年頃に甲州で漆置きによる紋様付けが始まり、江戸末期には甲府買物独案内(1854年)に記述されるほど産地が形成されていました。この時期に、甲府城下には3軒の印伝細工所があり、そのうちの一軒が現在も継承されている印傳屋です。江戸時代の人々に広く愛され、多様な製品が製造されていました。
印伝の特徴は、鹿革に漆や他の顔料で模様を付ける伝統技法です。この技法の由来は、寛永年間(1624~1643年)に印度(インド)装飾革が日本に持ち込まれたことにあり、その後国産化された製品を印伝と呼ぶようになりました。甲州印伝は、遠祖・上原勇七が独特の方法を考案したとされ、400年前に遡ります。この技法では、鹿革に塗った漆のひび割れ模様を楽しんでいたといわれ、「地割れ印傳」や「松皮印傳」とも呼ばれていました。
明治時代には、甲州印伝は内国勧業博覧会で褒賞を得るなど、山梨県の特産品としての地位を確固たるものにしました。大正時代には製品の多様化が進み、ハンドバッグなどが製作されました。1975年には甲府印傳商工業協同組合が設立され、1987年には国の伝統的工芸品に認定されました。また、上原家では代々家長「勇七」のみに家伝の秘法を口伝してきましたが、現13代目からは印伝の普及のためにこれらの秘法が広く公開されています。これらの歴史的背景を通じて、甲州印伝はその独自の美しさと技術で現代に受け継がれています。