南部鉄器

南部鉄器とは?歴史や特徴を深堀り!

南部鉄器とは?魅力や特徴を紹介

南部鉄器は、岩手県盛岡市や奥州市で製造される、17世紀から続く伝統的な鉄鋳物工芸品です。その魅力は多岐にわたりますが、特に注目すべき点を以下に紹介します。

錆びにくく丈夫

南部鉄器は、非常に丈夫で長持ちすることが大きな特徴です。適切なお手入れを行うことで、何世代にもわたって使用することが可能です。その耐久性から、「一生もの」として親しまれています。
お手入れの大まかな方法もこの後紹介いたしますので、ご興味ある方はぜひ最後までお読みください。

鉄分の補給

南部鉄器を使用して調理することで、食品や飲料水に鉄分が溶出します。 溶出する鉄分の内80~95%が吸収されやすい二価鉄となっており、継続的な使用で貧血予防・改善に効果があることが明らかになっています。
やかんではなく南部鉄瓶を使用してお湯を沸かしてみたり、南部鉄器製のフライパンで料理をしてみたり、普段のライフスタイルに南部鉄器を加えるだけで不足しがちな鉄分を摂取できることができ、大変お手軽なのが特徴といえるでしょう。

まろやかな味わい

南部鉄器で沸かしたお湯は、水道水のカルキを吸着し、お茶やコーヒーの味をまろやかにします。この特性により、日々の飲料がより一層美味しく感じられます。

保温性

鉄は熱を長時間保持する性質を持ち、南部鉄器はその性質を生かしています。そのため、料理や飲み物を長時間適温で保つことができ、食卓での活躍も期待できます。
さらに、南部鉄器の厚みがある構造は、熱を均一に伝える役割も果たします。これにより、料理する際に食材が均等に加熱され、温度ムラが少なくなるため、料理の仕上がりが向上します。この均一な熱伝導性は、繊細な温度調整を要する料理や、じっくりと時間をかけて調理する煮物などにおいて、その真価を発揮します。結果として、保温性だけでなく、調理の質の向上にも寄与するのです。このように、南部鉄器は実用性と美しさを兼ね備えた、長く愛用できる伝統工芸品として、その価値が高まっています。

美しいデザインと海外での人気

伝統的なあられ紋様や自然を模したデザインは、南部鉄器の象徴的な美しさを表現しています。また、その美しさと機能性は海外でも高く評価され、欧米やアジア諸国などからも愛好家がいます。特に、近年では伝統的なデザインに加え、現代のライフスタイルに合わせたスタイリッシュな製品やIHに対応したタイプの南部鉄瓶なども登場し、国内外でその人気を拡大しています。

このように、南部鉄器はその丈夫さ、健康効果、味の向上、保温性、そして国内外で愛される美しいデザインが魅力となっています。これらの特性が、南部鉄器を単なる調理器具を超えた、伝統ある工芸品として高い価値を持たせています。

南部鉄器の歴史

南部鉄器は、17世紀中頃に岩手県の南部藩主が京都から釜師を招き、茶の湯釜の製造を始めたことに由来します。この時代から、盛岡の豊富な鉄資源を活用し、木炭や砂鉄を用いた鋳物生産が奨励されました。
特に宝暦年間には、茶道の流行に伴い、小型化された鉄瓶が開発され、日用品としての地位を確立しました。
戦時中に製造が一時的に禁止される困難もありましたが、伝統は脈々と受け継がれています。
盛岡市奥州市が中心地となり、これらの地域では現在も多岐にわたる南部鉄器が製造されています。長い歴史を経て、今日では岩手県から世界に誇る伝統工芸品として、その美しさと機能性で高い評価を受けています。

南部鉄器の製作工程

南部鉄器の製作工程は、伝統的な技法と職人の熟練した技術を駆使して行われます。この工芸品の製作には、以下の段階が含まれます。


1.デザイン: 最初に、鉄瓶のデザインを決定します。実寸大の図面を描き、これを基に鉄板から挽型板を作成します。
2.鋳型の製作: 素焼きの型に、鋳物砂と粘土汁を混ぜ合わせたものを使用して、挽型板を回しながら鋳型を作ります。
3.紋様捺し: 胴型が乾燥する前に、霰棒を用いてひとつひとつ紋様を捺します。
4.鋳型の組立: 中子を胴型に入れ、尻型をかぶせて鋳型を組み立てます。この間隔が鉄瓶の厚みを決めます。
5.鋳込み: 電気炉で溶かされた鉄を柄杓で受け、鋳型に流し込みます。
6.型出し・砂落とし: 鉄が固まった後、鋳型から製品を取り出し、砂を落としてバリを取り除きます。
7.着色: 鉄瓶を加熱した後、漆を焼付け、おはぐろや茶汁を刷きつけて色をつけます。最終的に布で丁寧に拭き上げます。
8.完成: 最後に鉉(つる)を取り付けて、製品の検査を行い、完成となります。

南部鉄器のお手入れ方法

南部鉄器の使用と手入れ方法は、長く愛用するためにとても重要になってきます。今回は南部鉄瓶と南部急須、2つの南部鉄器製品を例に解説していきます。

南部鉄瓶

1. 使い始め

鉄瓶を使い始める際は、「ならし」作業が必要です。これには、鉄瓶を水で軽くすすぎ、8分目まで水を入れて中火で沸騰させ、沸騰後お湯を捨てるという工程を2~3回繰り返します。これは、鉄瓶の内部を清潔に保ち、金気(水に溶け出た鉄分、そのにおいや味)を減少させるためです。

2. 使用後

使用後は、鉄瓶のお湯を全て捨て、蓋を取り外した後、余熱や軽い空焚きで内部を乾燥させます。鉄瓶の表面は、熱いうちに乾いた布巾で軽く拭くことで艶を出せます。

3. サビ対策

鉄瓶がサビてしまった場合やお湯が濁った場合は、煎茶の茶葉を使った煮出し作業でサビを和らげることができます。これは、煎茶のタンニンと鉄分の化学反応を利用した方法です。

サビと湯垢について
南部鉄瓶はその性質上、使用を重ねるごとに赤さびが発生します。その場合でも、沸かしたお湯が澄んでいれば問題はありません。また、適切な手入れとそれに伴った使用を重ねる事で「湯垢」が育ち、赤さびを抑えることが出来ます。
そのためにも、是非使い始めの手入れを行い、湯垢を育ててみてください。

4. 注意事項

鉄瓶の中は、手で触ったりスポンジでこすったりせず、赤い斑点が出ても白い湯垢の膜ができるまではそのままにしておきます。湯垢はお湯を透明に保ち、味を良くする効果があります。

南部急須

1.使用前

南部急須は南部鉄瓶と異なり、慣らしの工程は特に必要ありません。ただし、商品購入後は割れなどの破損がないか、必ず確かめてから使用するようにしてください。

2.使用後

まず、使用後は急須内部や表面、茶こしを出来るだけ早く洗いましょう。長時間放っておくと錆の原因となります。また、洗浄後は必ず水けを拭き取ってからしまうようにしてください。こちらも放置しておくと錆の原因となってしまいます。
長期の使用により内部に茶渋が付着している場合は、熱湯を入れて1~2時間放置し、その後中性洗剤と柔らかいスポンジで洗うようにしてください。

急須のに内部は「ホーロー加工」という特殊加工が施されている場合がほとんどです。金属製のたわしやクレンザーなどは使用しないようにしてください。また、可能な限り洗剤も使用せず、水またはぬるま湯でのみ洗浄することをお勧めします。

これらの手入れ方法により、南部鉄器製品は一生ものの道具として、その美しさと機能を保ち続けることができます。毎日の使用と丁寧な手入れを通じて、道具を「育てる」楽しみを味わうことができるでしょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか?今回は岩手県の伝統工芸品「南部鉄器」の解説でした。

「長く使う」という近年関心の高いSDGsにピッタリな伝統工芸品。ただ使うだけでなく、是非「育てる」ということも楽しんでみて下さい。

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