近江上布

近江上布の歴史~700年以上続く伝統の織物~

近江上布の歴史を年代別にかんたんに紹介

鎌倉時代:近江上布の織り始め。琵琶湖東岸や愛知川、能登川近くで大麻栽培が盛んになり、麻織物が発展。
江戸時代:彦根藩の保護と振興により、「高宮布」として重宝され、幕府へ献上。着尺地や蚊帳地などが生産され、地場産業として安定。
1700年代後半:染め技術が発展し、「板締」や「櫛押捺染」などの技法が生まれる。
昭和時代:「型紙捺染」技法が生み出される。
1977年:近江上布が経済産業省指定伝統的工芸品に指定。
明治時代:最盛期を迎え、年間六十万反程が生産される。 ​

近江上布の歴史(詳細)

近江上布の歴史は鎌倉時代にさかのぼり、この時代にはすでに織られていました。滋賀県湖東地域、特に琵琶湖の東岸や愛知川、能登川の近くでは、霧が発生しやすく湿度が高い環境が大麻栽培に適していたため、古くから大麻の栽培が盛んに行われてきました。この地方の豊かな水と高い湿度は、麻織物の発展に貢献しました。京都の職人が湖東地域に移り住み、農業をしながら住民に麻織物の技術を教えたことが、近江上布の始まりとされています。

江戸時代には、彦根藩の保護と振興により、近江上布は「高宮布」として重宝され、幕府への献上品としても織られました。この時代から着尺地や蚊帳地などが盛んに生産され、安定した地場産業となりました。近江商人の活躍により全国に売り歩かれ、東北地方からの苧麻の持ち帰りも含め、技術の発展と認知度の向上に大きく貢献しました。染めの技術も独自に発展し、1700年代後半には「板締」「櫛押捺染」などの技法が生まれ、近江上布独特の上品な絣模様が生まれました。昭和に入ってからは、「型紙捺染」という技法も生み出されました。

その結果、近江上布は1977年に経済産業省指定伝統的工芸品に指定されました。明治時代には最盛期を迎え、年間六十万反程が生産されるほどになりました。この長い歴史と技術の進化を経て、近江上布は現在もその価値を認められています。

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