鎌倉彫の歴史を年代別にかんたんに紹介
鎌倉時代 (約800~700年前): 仏師や彫刻家が鎌倉に集まり、木彫漆塗の技法で仏具を作ることが鎌倉彫の始まり。
13世紀: 建長寺(1253年)や円覚寺(1282年)などの禅宗寺院が建立され、仏具などに鎌倉彫が用いられるようになる。
室町時代: 寺院用仏具や茶道具として鎌倉彫が珍重され、日本独自の鎌倉彫として確立。
文明11年(1481年): 金蓮寺所蔵の大香合など、鎌倉彫の優れた作品が制作される。
江戸時代: 鎌倉彫が生活雑器や茶道具として広く普及。
元禄7年(1694年): 『万宝全書』に「鎌倉雕」の名称と解説が現れる。
明治時代: 神仏分離令により仏師の職が減少し、新しい鎌倉彫のデザインや技法が発展。
昭和54年(1979年): 鎌倉彫が伝統的工芸品として指定される。
鎌倉彫の歴史(詳細)
鎌倉彫の歴史は、約800~700年前の鎌倉時代に遡ります。この時代に、お寺の仏像を作る仏師や彫刻家が鎌倉に集まり、貴重な仏具として珍重された彫漆器に影響を受けた木彫漆塗が鎌倉彫の始まりとされています。特に、建長寺や円覚寺などの禅宗寺院では、宋時代の中国禅宗文化が取り入れられ、唐物の彫漆器が仏具として珍重されました。
室町時代には、寺院用の仏具や茶の湯の興隆に伴い、茶道具としても鎌倉彫が珍重されました。この時代には、唐物を意識した木彫漆塗りが日本独自の鎌倉彫として確立し、屈輪や牡丹文様の香合類が多く制作されました。特に、金蓮寺所蔵の大香合は、文明11年(1481年)と刻まれ、最古の作例とされています。
江戸時代には、鎌倉彫は寺社から一般生活にも広がり、火鉢や手焙などの生活雑器や茶道具が作られるようになりました。元禄7年(1694年)に成立した『万宝全書』にも「鎌倉雕」の名称と解説が見られ、この頃にはすでに広く普及していたことがわかります。
明治時代には、神仏分離令による廃仏毀釈の動きが広がり、仏像制作の仕事が激減しました。この中で、仏師は鎌倉彫の制作に力を注ぎ始め、新しいデザインや技法に挑戦しました。特に、後藤齋宮と三橋鎌山の二人の仏師が鎌倉彫の発展の基礎を築きました。明治十年代には内国勧業博覧会に鎌倉彫を出展し、受賞の栄誉に輝いています。
第二次世界大戦後、鎌倉彫は産業として確立し、新たなデザインや表現を模索し始めました。戦後の高度経済成長期には、美術工芸としての地位を築き、昭和54年(1979年)には伝統的工芸品として指定を受けました。現代では、アクセサリーやインテリアなど新しいデザインの鎌倉彫も広く制作されています。