日本を代表する漆器とも言える輪島塗は、堅牢で美しく高級感があり一生ものの逸品と言われています。しかし、実際に輪島塗を手にしたことがあってもどのような漆器か詳しく聞かれてしまうと困りますよね。
「輪島塗は色鮮やかで美しいけど、どのようにして光沢感を出しているの?」
「古くからある輪島塗は、どのような歴史的背景があるのだろう」
「手作りされている輪島塗って、どれくらい時間がかかるのか知りたい」
このように、漆器として知られている輪島塗について多くの疑問があります。
本記事では、高級漆器である輪島塗の定義や歴史、輪島塗の魅力について徹底解説いたします。そして、伝統工芸品に指定されている輪島塗の魅力を詳しく知って、より身近に感じてください。
目次
輪島塗の定義と歴史
日本には数多くの漆器がありますが、輪島塗の歴史は古いです。輪島塗と言えるのは特定の地の粉を使用したものだけが名乗れる漆器です。
輪島塗は、石川県輪島市で作られており、石川県でしか採れない輪島地の粉を使用しています。輪島では、上質な土でできた地の粉が採集できます。それを下地にすることで、とても強い漆器を作ることができるのです。輪島塗と呼ばれるものは、輪島地の粉を使用したものだけです。
輪島塗の歴史
輪島塗の起源についてはさまざまです。室町時代に根来寺(ねごろじ)の僧が伝えた説や、大陸から約1000年前に伝わった説などがあります。今の所、明確な起源は分らず定かではありません。ただ、いくつかの説に共通しているのが、日用的に使用されていた根来塗が由来になっていることです。身近にあった漆器が発展して、やがて輪島塗になったのでしょう。
また、輪島市内にある重蔵(じゅうぞう)神社には、1476年に書かれた棟札(むなふだ)に書かれた塗師の名前と、建立時からある塗扉に輪島塗が使われていたことから、当時から輪島塗があったとわかっています。
やがて江戸時代になると輪島塗は全国的に販売されるようになり、製造技術も洗練されていきます。1630年頃には現在のような輪島塗になったと言われ、多くの方に親しまれる漆器となりました。
全国区に知られるようになった輪島塗は、1975年に国の伝統工芸品に指定されたことで一気に注目を集めます。多くの人が輪島塗を手に取り、1977年に重要無形文化財にも指定されることになります。輪島塗は長い歴史と質の高さが評価されている漆器です。
【輪島塗の魅力1】美しい光沢と鮮やかな色彩
輪島塗の大きな魅力と言える「鮮やかな色彩と美しい光沢」は、沈金・蒔絵の加飾の技法とによって完成されます。それぞれの技法を調べてみましょう。
鏡のようなツヤと美しい光沢
輪島塗は手にするとわかる「鏡のように美しい艶」も魅力の1つです。この艶を出す方法を「呂色(ういろ)」と言います。
呂色は、輪島塗の仕上げの工程で、表面を柔らかい炭で研ぎ、呂色漆を塗り磨き上げます。同じ工程を繰り返し行うことで輝きが増し、美しい仕上がりになります。呂色には、呂色師と呼ばれる職人がおり、独自の方法で磨き上げています。
鮮やかな色彩を表現する「沈金・蒔絵」
輪島塗に描かれる芸術的な加飾は、とても繊細で美しさがあります。漆のアートとも言われる「沈金」は、輪島で盛んに行われるようになった加飾の技法です。
沈金のみを使い漆の表面に絵柄を彫り込んだり、うろの付いた粉を埋めて模様を描いたりします。彫り込む溝の深さによって、立体的な模様が完成。この沈金の加飾によって輪島塗の技法が広がり、多くの表現が誕生しました。
また、細かな漆模様に金粉をつける「蒔絵」は、粘り気のある漆液を筆で描いていきます。細かな線や広い面積を塗るには職人の高度な技術が求められるでしょう。
輪島塗の豊富な色彩と美しい光沢は、職人技と言えます。ひとつの漆器を完成させるのに複数の職人が作業を行うので「作られるたびに一点もの」である点も手仕事の特徴ですね。職人たちが完成させた輝きは独自の風合いと気品があり、使う人に幸せを運んでくれます。
【輪島塗の魅力2】長い時間をかけて完成する手仕事の技術力
職人たちの技を感じる技法の他に、輪島塗には細かな作業工程があります。ひとつの輪島塗が完成するまで、100回以上の手数がかかるのだとか。長い時間をかけて完成させる輪島塗の作業工程には多くの時間をかけています。分業制により多くの職人さんたちの手が加わる輪島塗は、より一層手作業の温かみを感じることができます。
椀木地づくり
まず、輪島塗を作る時には木地づくりからスタート。木地作りは、お椀の原型をつくる作業で、ケヤキやミズメサクラの木を使用します。元になる木を伐採し、数年間放置します。しっかりと幹まで枯らした後、木を粗削りして大体の形にします。次におが屑を使って燻製乾燥をさせ、長期間自然乾燥を行う過程に。かなりの期間を必要とすることがわかりますね。完全に乾燥が終わると、いよいよ形を整える作業へ移ります。
形を整える作業は、荒挽き→外挽き→内挽き→底挽きと、少しずつ細かな部分に進みます。主にカンナやろくろを使用し、形を整える作業です。
下地づくり
木地の作業が終わると次は下地作り。下地は輪島の地の粉を使用して作ります。切彫り作業は、割れ目を少しずつ彫りながら行い、補強をします。この下地作業によって強い輪島塗が完成します。
また、破損しやすい部分は「布着せ」という技法で布あてがってさらに補強をします。特に割れ目など破損しやすい部分は、丁寧に下地を作り、丈夫で耐久性の高い漆器へ仕上げていくのです。多くの時間をかけて強度を高めていることがわかります。
次に生漆と砥粉(とのこ)を混ぜた下地を全体に塗り、乾燥させます。乾燥後に砥石を使い形を整えて地研ぎを行います。
漆塗り
地研ぎが終わると漆を塗る作業へ進みます。
塗り作業は、木地や下地づくりと漆を塗る作業は上塗りと下塗りがあり、漆を採取することから開始。漆は1本で200g程しか採取されず、何百本もの漆の木を必要とします。1本から少量しか採れず、本数が多くいります。
採取した漆をろ過し、遠心分離器にかけて不純物を取り除きます。不純物を取り除くと混じりけの純粋な漆になるでしょう。生漆を採取したら、熱を加え「なやし」状態にします。無地の漆器は上塗りし完成。
輪島漆器の魅力と言える加飾は、上塗りの後、研磨剤で磨きを行います。呂色した漆器に蒔絵や金銀を押し込み装飾(沈金)を施して、作品とも言えるほどの美しい漆器が完成します。
このようにいくつもの工程を重ねて完成した輪島塗は、手作りの温かみがあります。手に取るとひとつひとつに違いがあり、一点ものを使用することができるでしょう。輪島塗は高価な漆器ですが、丁寧に作られていることで丈夫で長持ちします。機械生産の器とは違う魅力があります。
【輪島塗の魅力3】使い続けるごとに美しく経年変化する風合い
数多くの工程を重ねた輪島漆器は、長年大切に愛用していきたいですね。しかし、輪島漆器を使い続けていくと経年劣化によって風合いが変化していくのがわかります。
これは、人が使用することで、漆が水分を吸収して成長する事で起こる漆塗り特有のもの。一般的なお椀は、ウレタン製のものが多く、このような変化は起こりません。輪島塗は完成するまでに何層にも漆を重ねることで丈夫になり長持ちすることで、経年劣化を楽しめるのです。
長年使い続けた輪島塗は、色や艶が増して新品とは違った魅力があります。器を育てることで愛着が沸き、特別なものになるのでしょう。
輪島塗を使い続けるために必要なメンテナンス
漆器を育てる魅力を知った次は、輪島塗はなるべく長期的に使用して経年劣化を楽しめるように輪島塗の洗い方を紹介します。
輪島塗の洗い方
まず、たわしや硬いスポンジは使わず、柔らかいスポンジで中性洗剤を泡立てて洗います。ぬるま湯で流すことをおすすめしますが、水でもかまいません。そして、食器乾燥機は使用せず自然乾燥をしましょう。
洗う時の洗剤は、市販されている食器用洗剤で問題ありません。研磨剤も入っておらず安心して使えるでしょう。水で洗ってもすぐに乾き、漆器との相性も抜群です。
輪島塗は難しいお手入れなどいらず、日常食器として気軽に使用できます。乾燥と高熱、直射日光に注意すれば、長く愛用することができます。
大切に使い続けるにはメンテナンスが必要ですが、手入れときくと何となく面倒なイメージがあります。少し前まで輪島塗は「米の研ぎ汁で洗うように」とか、「洗ったらすぐに拭くように」と言われていましたが、現在では特別なお手入れは必要なく、洗い方も他の食器と変わりません。
欠けたり傷んだりした輪島塗は修理できる
お手入れが簡単な輪島塗は日常的に使用したくなります。しかし、輪島塗を頻繁に使用していると落としてしまって欠けてしまうことがあります。
そのような時は、傷や剥げ、色が褪せてきた輪島塗の修理を工房さんに依頼しましょう。
輪島塗の主な修理方法は、漆器の下地に欠けやすい部位を布で補強する布着せが行われます。地の粉に米海苔と生漆を重ねて塗る、本堅地技法で再生されます。堅牢な輪島塗は傷や剥げが深い部分に及ぶことが少なく、表面の上塗りをいったん落として再度塗ることで、新しく甦ります。
気になる金額は、重箱の修理で1段6000円~、お椀の塗り替えは内側だけで3000円~。工房によって値段も変わりますから、修理を請け負ってくれるか一度問い合わせをすると安心ですね。輪島塗は、漆が剝がれたり欠けてしまっても、修理することで使い続けられる魅力があります。
【輪島塗の魅力4】日本の伝統文化としての価値
欠けても修理できる輪島塗はとても身近な漆器ですが、日本の伝統文化としても価値があります。
輪島塗の堅牢さと優美さが評価され、1975年には国の伝統工芸品に指定されています。輪島塗は完成するまでにいくつもの工程を重ね、職人たちが手作業で行う技術力が必要なもの。完成するまでの工程は伝統的な技法が用いられ、長い月日をかけてやっと完成します。
手間と時間をかけて完成した輪島塗は、長年使うことで美しく輝き、時に傷ついてしまっても修理をすることで甦り、何代にもわたって使い続けることができます。最近では、モダンな現代の暮らしに合うようなデザインも多くなり、いっそう身近に感じられる漆器になりました。
また、輪島塗は日本最古の漆器であり、縄文時代から使われていたことがわかっています。現在確認されている最古の漆芸品として、石川県七尾市から漆塗櫛が出土しています。これは、呪術者の頭部を飾る神聖な道具として使われ、赤色の漆で塗られていました。赤色の漆は生命の色としてたたえられ、触れるとかぶれることで恐れられていたのでしょう。漆は呪具を飾る塗料として欠かせないもので、昔から精神的な支えに役立っていました。
日本の伝統工芸品として扱われる輪島塗は日本が誇る漆器と言えるでしょう。生活に取り入れることで食卓が華やかになり、豊かな生活になります。
輪島塗はプレゼントと相性が良い
輪島塗は堅牢で美しく、魅力的な漆器です。技術力のある職人たちが、分業してひとつの漆塗りを完成させる手間暇をかけたものでした。
自分用に輪島塗を購入して日常の食器に使用すると、何気ない食事でも贅沢感があふれ、生活がより上質なものへ変化するでしょう。また、輪島塗はプレゼントで贈ると大変喜ばれます。高額な漆器は高級感があり、末永く使える素敵なプレゼントになるでしょう。
モダンなデザインの輪島塗は若い方でも使いやすく、現代の生活に馴染みます。ペアの輪島塗は結婚祝いにもおすすめです。
そして、海外から来た方は、日本の伝統工芸品を大変喜びます。職人たちが手作業で作った輪島塗は、魅力が詰まっています。日本の思い出として特別なプレゼントになるでしょう。このように、高級感のある輪島塗はプレゼントに最適です。大切な方への贈り物に輪島塗の商品を贈ってみてはいかがでしょうか。