輪島塗とは?箸やお椀が有名な石川県の伝統工芸品の特徴を解説

伝統工芸品「輪島塗」とは?産地:石川県輪島市

輪島塗とは、石川県の輪島市で生産されている漆器を指します。輪島塗は国指定の伝統工芸品に指定されており、その製作工程は全部で124工程。

全ての工程が職人さんの手作業によって作られているため完成までに半年から1年、長いものでは2年以上もかかるほどの時間と労力がかけられている工芸品です。

ちなみに輪島市は、石川県の能登半島(飛び出ている地域)の北西部に位置しています。

輪島塗の特徴は「丈夫さ・美しい加飾」

輪島塗の特徴としては、「丈夫である・美しい加飾」などが挙げられます。下地に珪藻土を使いながら何度も何度も繰り返し塗られた漆による丈夫さと、蒔絵や沈金の施された美しい輪島塗は石川県を代表する工芸品に成長しました。

輪島塗の魅力は「美しい加飾」

輪島塗の魅力としては、何度も漆を塗り重ねることで生まれる「表面の光沢」と、沈金や蒔絵による「美しい加飾」が魅力です。また、輪島産の珪藻土(地の粉)を下地漆に混ぜたり、欠けやすい箇所に布をあてて補強する「布着せ」という技法を用いたりすることで漆器の強度が高くなり、長く愛用できる点も輪島塗の魅力の1つです。

丈夫で美しい輪島塗の使いやすさは?

輪島塗の使用方法は一般的な食器と同じなので使いやすいです。しかし、天然木と天然漆を使用しており食洗器や食器乾燥機が使えないため、手洗いに関してやや不便と感じる可能性があります。とはいえ、一般的な食器に比べて丈夫なので、長期間愛用ができ手にも馴染むため時間がたつほどに使いやすさが増すでしょう。

輪島塗の特徴・魅力についてもう少し詳しく知りたい方は以下の記事を読んでください。

→輪島塗の魅力を徹底解説【高級漆器としての美しさや丈夫な理由まで紹介】

輪島塗の歴史について簡単に解説

輪島塗は、石川県の輪島市で400年以上も前から作られている伝統工芸品です。輪島塗は、木に漆(うるし)という液体を何度も塗り重ね、磨いて作るのが特徴です。

漆はとても丈夫で熱にも強いため、輪島塗で作られたお椀やお箸などは生涯使い続けられるといわれています。また、漆塗り独特の美しい色や光沢を出すことができるため、輪島塗は美術品としても高く評価されています。

輪島塗の起源にはさまざまな説がありますが、室町時代から輪島塗の技法に近い作られ方をした製品が発掘されています。また輪島塗は江戸時代に転換期を迎えます。一つの理由は、全国的に売り出すようになり分業制がスタートしたこと。二つ目の理由は「地の粉」の使用が始まったことなどが挙げられます。

分業制によって効率的に生産が可能になり、地の粉の使用によって美しくも丈夫な漆器を作ることができるようになりました。伝統を守り続けながらも作り継がれた輪島塗の技法や美しさ、文化的価値が高い評価を受け、1975年には伝統工芸品に指定されました。

輪島塗の歴史についてもう少し詳しく知りたい方は以下の記事を読んでください。

→輪島塗の歴史を簡単に解説【江戸時代以降の産業の発展や現在の取り組みなども紹介】

輪島塗は手間ひまかけて作られる高級品

輪島塗の製作工程は合計で124工程あるといわれています。

輪島塗の作り方を簡単に説明すると「3段階」で作られる

輪島塗の製作工程は、大きく分けて「木地づくり→漆塗り→加飾」の3段階の工程を経て作られています。

①木地づくり:原木から椀の形に木を削る
②漆塗り:①で削った椀に漆を塗る
③加飾:金箔や金粉でデザインを施す

「木地」「塗師」「加飾(沈金・蒔絵)」の3種類の職人さんによる分業制で輪島塗は完成しますが、これらの工程を総合的に行う「塗師屋」では、一つの工房で企画から製造まで行う工房もあります。

輪島塗の作り方についてもう少し詳しく知りたい方は以下の記事を読んでください。

→輪島塗の作り方を簡単に解説【漆の特徴から沈金・蒔絵の解説まで詳しく解説

輪島塗の100回塗りとは漆を「100回塗ること」

輪島塗の「100回塗り」とは、その名も通り漆を100回塗り重ねることを指します。漆を塗る→乾燥の工程を100回繰り返す時間と手間がかかる分だけ表面の光沢が上がる点から、漆器の質を決める重要な工程です。

輪島塗の加飾技法「沈金」

沈金とは、輪島塗の加飾の技法の1つです。具体的には、漆を塗り終わった漆器の表面にノミで絵柄を掘り、金箔や銀箔・色粉などを付け装飾を施します。漆を接着剤代わりに使い、金箔や色粉を溝に沈ませる点から「沈金」と名が付きました。

輪島塗で使用される漆は「天然漆」のみ

輪島塗の漆は「天然漆」を使用して作られています。国指定の伝統工芸品である輪島塗の要件として「天然漆」が含まれているため、天然漆を使用していないと輪島塗と名乗ることができません。

輪島塗の「漆塗り」や「加飾(沈金・蒔絵)」が体験できる

輪島塗の体験をする場合は「漆塗り」と「加飾(沈金・蒔絵)」のどちらを体験するか決めましょう。例えば、「輪島塗 ぬり工房 楽」さんでは、布着せの体験や昼食や作業後のお菓子休憩がセットになった乾漆が体験できるコースがあります。

「輪島工房長屋さん」では、パネルへの沈金体験や沈金・蒔絵を施したmy箸づくりが体験できます。さまざまな工房で輪島塗の体験ができますが、その多くが沈金や蒔絵の体験なので、漆塗りの体験できる施設が少ない印象です。

加えて、輪島塗の体験を希望する方は、事前に工房さんの方へ伝えておきましょう。急に押しかけてしまうと、体験の枠が埋まっていたり、希望の体験ができなかったりする危険があります。

輪島塗は箸やお椀を中心にさまざまな種類がある

輪島塗の種類は、お椀・箸・コップや湯呑・お盆などの食器を中心に作られています。その他にもボールペン・印鑑・アクセサリーなどの生活雑貨、骨壺や位牌といった仏具まで幅広い種類があります。また、輪島塗技法が施されたスピーカーや地球儀が作られるなどしてます。

輪島塗の模様は植物や動物が描かれていることが多い

輪島塗の加飾に多い模様は「縁起の良い模様」です。具体的には、縁起物として有名な「松・竹・梅」を始めとした縁起物の植物が多いです。

長寿の象徴の「鶴」や厄除けや飛躍として「ウサギ」などの動物も加飾で用いられます。その他にも、シンプルなデザインから幾何学模様まで幅広い模様が輪島塗には施されています。

輪島塗はアクセサリーも豊富:ネックレス・イヤリングなど

輪島塗は、お箸やお椀以外に「ネックレス」や「イヤリング」などのおしゃれなアクセサリーも作られています。値段は、アクセサリーの大きさやデザインにもよりますが、小さめのネックレスで数千円から数万円。蒔絵が施されたイヤリングは10万円前後の高級品。

輪島塗の重箱の値段と特徴

輪島塗に重箱は、正規品の場合で10万円以上が多い印象です。一般的な四角いタイプから丸型・楕円タイプ、お重の高さも3段が基本ですが2段などのバリエーションがあります。また、本体色は基本的に黒か朱色で、無地のものから加飾されているものまでさまざまです。

輪島塗のお盆の値段と特徴

輪島塗のお盆は新品で1万円前後から。メルカリやオークション等では数千円から購入ができ、デザインは無地(朱色・黒)や動植物が描かれているものまで幅広いです。

輪島塗の弁当箱の値段と特徴

輪島塗の弁当箱は正規品でも1万円前後から購入ができます。

輪島塗の弁当箱の特徴としては、漆に含まれる珪藻土が容器内の湿気を適度に吸収してくれるため、湿気がこもってご飯やおかずがべちゃべちゃになるのを防いでくれます。また、輪島塗は強度が高く丈夫なので、持ち運びが前提のお弁当箱と相性が良いです。

高級品輪島塗の値段が高い理由:手間ひまかけて作られているから

輪島塗の値段が高いのは、手間ひまかけて作られているから。輪島塗は、輸入品の安価な食器よりも製作工程が多く、手間暇かけて作られている分だけ価格も高くなります。

加えて、漆器の素材である漆や木材を国産の高品質なものを使用している点からも値段は高くなります。しかし、壊れにくく丈夫で見た目も美しい輪島塗は生涯使い続けられるといわれているため、将来的に使い続ける点も含めた値段になっています。

輪島塗の値段の違いは何?

輪島塗の値段の違いは「漆や木材の質」や「完成までにかかる手間と時間」などの要素から、類似する輪島塗の商品でも値段が変化します。

逆に輪島塗の安い商品は?

値段の安い輪島塗は、数千円程度で購入ができます。輪島塗と名の付く箸やお椀、お盆などがネットショップやメルカリでなどで出品されていますが、正規品であるか曖昧なため、購入の際は注意が必要です。

輪島塗の平均的な値段

輪島塗の平均的な値段は、安いもので数千円から1万円くらい。高いもので数万円~10万円前後です。国産の漆や木材を使用しているか、有名な職人さんが作っているかでも価格が変わります。

輪島塗の買い取り相場は?

買取相場としては、安いもので数千円。高いものでは10万円以上で買い取ってもらえる可能性があります。そのため、いただいた輪島塗を売る場合は、輪島塗の知識がある専門のお店で査定をしてもらうと良いでしょう。メルカリやオークションなどで、高価な輪島塗に気づかずに割安で手放すのは危険がありますから。

輪島塗で一番高い商品は「1760万円の虎」

輪島塗で一番高い商品は、おそらく和島漆器大雅堂で販売されている「総輪島塗りの虎 17,600,000円(税込)」です。

輪島塗で一番安い商品は?

一概に「この輪島塗が一番安い!」とは言えません。ネットショップや通販サイトなどで輪島塗のお箸が千円以下で売られているのですが、簡易で作られているもしくは、輪島塗風で作られているだけで、輪島塗と名乗れる要件を満たしていない可能性があります。

輪島塗の代表的な工房や有名作家について

輪島塗の工房は、大きく分けて「塗師屋」「加飾」「木地」「その他」の4種類あります。漆を塗る工程を見学したい場合は塗師屋の工房へ、沈金や蒔絵を見学したい場合は加飾の工房へ見学に行くと希望の工程をじっくりと見学できるでしょう。また、見学に行く際には、事前に伺うことを工房の方へ伝えておくとスムーズな見学ができます。

輪島塗の老舗や有名店は?

輪島塗の工房は、数代続く老舗が多いです。中でも歴史が深い工房としては、江戸時代から250年の歴史を持つ「小西庄五郎漆器店」、1813年創業で200年続く「輪島屋善仁」、1858年創業の「塩安漆器工房 藹庵」、1860年創業の「ギャラリー蔦屋」などの老舗の工房があります。

輪島塗の有名店としては、「田谷漆器店」がおすすめです。「田谷漆器店」は創業から200年の歴史があり、漆器のオーダーメイドの受注を行っているほか、漆器のレンタルサービスも受けられます。また、厳選ストアから購入した商品は5年間無料のメンテナンスを受けられる特典付きです。

輪島塗を支える職人は約1,400人

輪島塗の職人(従事者)の数は、2018年時点で約1400人ほどといわれています。輪島塗は分業制で作られているため、素材・漆塗り・加飾のそれぞれで有名作家や人間国宝が多い点が特徴です。

輪島塗に関わる職人で人間国宝に認定された方々

輪島塗に関わる職人で人間国宝としては、赤地友哉(あかじ・ゆうさい)と塩多慶四郎(しおた・けいしろう)などが「髹漆(きゅうしつ)」で人間国宝に認定。

加えて、2018年に山岸一男が沈金の人間国宝に認定。歴代では、前大峰(まえ・たいほう)や前史雄(まえ・ふみお)などが沈金の人間国宝に認定されています。

蒔絵作家の人間国宝としては、漆の神様と呼ばれる「漆聖(しっせい)」と呼ばれるほどの技術を誇る松田権六(まつだ・ごんろく)などが有名です。

輪島塗の箸の特徴や値段

輪島塗の箸の特徴は、伝統工芸品として名乗れるように「厳選した素材」と「手間ひまかけて作られる製作工程」などが挙げられます。輪島塗の箸の値段は、安いもので2,000円前後。高いものでは5万円以上の高級なものまであり、かなり価格幅が広いです。

輪島塗の箸のおすすめの選び方

輪島塗の箸は、手触りや質感の良さから「国産の素材」が使われている商品がおすすめです。また、沈金や蒔絵が施されている箸はキラキラ光る点から、デザイン以上の高級感が感じられます。

輪島塗の高級な箸と一般的な箸の違い

高級な輪島塗の箸は、施されている彫刻や使われている漆が高品質なものかで選びましょう。また、漆の質が高ければ箸の手触りや質感が良く、デザイン以上の高級感が感じられます。

輪島塗の夫婦箸の値段と特徴

輪島塗の夫婦箸は、安いもので2,000円前後から購入できます。シンプルなデザインから蒔絵が施された高級なものまでさまざま。ご自身で使うのはもちろん、贈り物としても人気の商品です。

輪島塗の箸は名入れできる?

輪島塗の箸は、贈答用として人気の商品なので基本的に名入れ対応しているお店やショップが多いです。しかし、ショップによっては名入れを受け付けていない場合があるので購入前に確認しましょう。

金沢で輪島塗の箸が買えるお店は?

金沢で輪島塗の箸が買える店舗は「JR金沢駅」の周辺だけで3店舗。

・(株)和幸 創作漆器わこう百番街店
・(株)石田漆器店 金沢百番街店
・(株)能作 百番街店

JR金沢駅周辺以外では、「金沢城・兼六園」付近で3店舗あります。

・石川県観光物産館
・輪島塗お箸専門 泉屋
・(株)能作 本店

輪島塗のお椀の特徴や値段について

輪島塗のお椀は、普段使いから来客時のおもてなし用と幅広く活用できる漆工芸です。デザインがシンプルなものから植物や動物の加飾が施されたものまでさまざまです。値段はホームセンターで売っている漆器風のお椀と比べるとかなり高い印象ですが、表面の光沢やツヤや質感の良さ、加飾の美しさや漆器自体の丈夫さなどの理由で人気を集めています。

輪島塗のお椀の値段は何円くらい?

輪島塗のお椀は、安いもので単体1万円前後でペアの場合には2万円以上。高いものでは10万円以上なのでお箸やお盆と比較しても平均的な値段が高いです。

最高級の輪島塗のお椀の金額は?

輪島塗のお椀で最高級といえる商品は、おそらく和島漆器大雅堂で販売されている「雑煮椀 梨子地・花の丸蒔絵 3,850,000円(税込)」です。

輪島塗のお椀を買うなら「 赤木明登(あかぎ・あきと) 」

輪島塗のお椀でおすすめの作家は「赤木明登(あかぎ・あきと)」です。彼は、日常でも使える輪島塗を目指しており、初めはマットな質感の器も使い込むほどに光沢やツヤが増していくのが特徴なので、生涯使い続けたいと思えるお椀が見つかるでしょう。

輪島塗のお椀をセットで買う場合

輪島塗のお椀のセットは、1セット2万円前後から購入ができます。デザインは無地のシンプルなものから動植物の描かれた贈答用にぴったりのものまでさまざまです。

輪島塗をアウトレットで買う場合におすすめのお店

輪島塗のアウトレットをお探しなら実店舗では「ギャラリー&アウトレット遊庵」がおすすめです。アウトレットの種類や在庫が豊富で、要望や予算に合わせて商品を提案していただけます。工房によってはネットショップでもアウトレットを販売している可能性があるので、気になる方はチェックしてみてください。その場合、実店舗に比べて種類や在庫に限りはありますが、興味のある商品はお問い合わせをしてみましょう。

輪島塗の見分け方:本物は「天然木」を使用

輪島塗を名乗れる商品は素材に「天然木」を使用しています。そのため、天然木の特徴である「鳴らしたときに軽い音がする」「塗面を見たときに木目が見える」などの見分け方があります。

どちらの見分け方も、実店舗でないとほしい商品が本物かどうか確かめられません。ネットで購入する場合に本物の輪島塗か心配なときは、正規品を販売しているネットショップを利用するのがおすすめです。それでも不安なことがあれば遠慮せずにショップにお問い合わせをしてみましょう。

メルカリで売られている「輪島塗」は安いけど買ってよい?

輪島塗の箸やお椀はメルカリだと定価より安く買えますが、あまりおすすめしません。理由としてはアフターフォローを受けられない可能性があるから。期間内であれば、漆がはがれたとき・器が壊れたときの修理対応をしてくれるアフターフォロー付きのお店やオンラインショップなどがありますが、メルカリで購入した場合にそれらのフォローが受けられない可能性があるため注意が必要です。